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みちのくGT[6]栗駒の峠を越えて [drive/touring]

岩手県大船渡市綾里の海沿いに建つ宿、「廣洋館」の一室。
目が覚めてカーテンを開けると、岬からちょうど陽が昇るところであった。

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大浴場から素っ裸でテラスに出ると眼下に海水浴場が見えるのだが、ここもやはり大津波の被害に遭ったのだろう、周囲の防波堤は破壊され、復旧のためと思われる重機も点在している。
後ほど宿のおかみさんに聞いてみたところ、高台にあるため宿は直接の損壊は免れたものの、やはり長期間の営業休止を余儀なくされたのだそうだ。
本当に大変だったと思うが、リニューアルしたというピカピカでモダンな造りの建屋は実に居心地が良い。
いずれまたこの地を訪れることがあれば、次回も泊まろうと思う。

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本日の東北地方は、どこも曇りから雨の予報。
ホースを借りてB3を洗い終わった途端、お約束のように弱い雨が降り始めた。
ま、晴れる日もありゃ降る日もあるのがグランド・ツーリングだ。
ちなみに宿のご主人はクルマ好きのようで、パーキングに駐められていたB3を前夜からチェックしていたとのこと。
「この年代のビーエムはイイですよねぇ」などと話しかけてくれ、出発前に楽しいクルマ談義と相成った(笑)。

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K9で大船渡まで戻り、山間のR45を南に走る。
殆どのクルマは並行するバイパス/高田道路へと流れ、二桁国道なのに貸切状態だ。
やがて陸前高田に近づくと、復興作業のためかダンプカーや大型トラックなどで道は渋滞気味となる。
1年半前と比べて瓦礫の山は整理され、あちこちで復旧工事が行われているが、建物は殆ど増えていないように思えた。
道路沿いには、避難時の有用な指標となるのであろう、大津波時の浸水域を示す標識が新たに立てられている。
点在するこの標識を結んで考えると、いかに広い範囲が浸水したのかをイメージでき、改めて被害規模の大きさに驚かされた。

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臨時駐車場にB3を放り込み、10分ほど歩いて「奇跡の一本松」を見に行く。
高く聳える松の木は保存処理が行われたとのことだが、しかしよく流されずに残ったものだとつくづく思う。
いや、この一本だけを見てそう思ったのではない。
建物がことごとく流されてしまった街の跡を見ているからこそ、この松だけが残ったのは文字通り「奇跡」だと思えるのだ。
画像や映像をどれだけ見ても実感することのできないリアリティが、ここにもあった。
復興へのシンボルとして、これからも末永く立ち続けてもらいたい。
強くそう願って、陸前高田を後にした。

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今日はこれから内陸部へと向かう。
しかしR343は工事や仕事のクルマが多く、思うようにペースが上がらない。
弱いながら雨も降っておりテンションは下がる一方、退屈な低速走行に眠気も襲ってきた。
そんな調子でK19を一関までダラダラ走り、ようやく交通量が激減したR342でアクセルを開けた途端、ワイパーが効かないほどの豪雨に見舞われスピード・ダウン(涙)。
と、付近に蕎麦屋の看板を見つけ、昼飯には少し早いが雨宿りも兼ねて暖簾をくぐる。
200円以上も高い代わりに健康にいいと言う韃靼[だったん]蕎麦を頼んでみるが、カレー味のソース焼きそばみたいな色の麺は、味も香りも食感もとても蕎麦だとは思えなかった。
良く考えたら普通の蕎麦だって健康食品だと言われているし、そもそも会社の健康診断で毎年オールAの私が、わざわざ必要以上に健康に気を遣う必要は全く無いのだ。
そのことにハタと気づいたものの後の祭りでピーヒャララ、隣のテーブルで普通の蕎麦を旨そうに喰っている地元のおじさんたちを横目で見ながら、独り地団駄を踏むのであった(泣)。

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雨は小降りとなり、R343は森を抜けて栗駒の稜線を目指す山岳ワインディング・ロードとなる。
路面はウェット・コンディション、このツーリングで磨耗が一気に進んだフロント・タイヤではあるが、無理をしなければ大丈夫だろう。
やがて雨に加えて霧も出始め、このまま悪天候の山へと登っていくのは辛いなぁと思っていたら、嬉しいことに岩手/秋田県境の栗駒峠で雨はパッタリと止んでくれた。
パーキングにB3を駐め、休憩がてら須川高原温泉の「大日湯」に入る。
解放感バツグンの露天風呂、青みががった乳白色の硫黄泉は湯量も豊富で実に気持ちがいい。
大満足で風呂から上がると、栗駒の空には雲を割って輝く太陽が顔を覗かせ始めた。
チンタラ走行+雨+韃靼蕎麦で下限に達したテンションも、一気に回復して余りある(笑)。

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秋田県に入り、K282/栗駒道路を快走。
アスファルトはほぼ乾いており、減りまくっているタイヤが啼かない程度のペースで3速メインのワインディングを走らせる。
突き当たりのR398は、20年ほど前に走った際の狭隘な「酷道」の面影は微塵も無く、今や長大な橋とトンネルとで構成された豪快なルートとなっていた。
岩手県側で降っていた雨の気配も余韻もまったく感じられず、太陽が眩しいほどに輝いている。
県境を越えた途端にこの天気、いや~、このルートを選んで本当に良かった。
引き続きK51でワインディングを楽しんだら、看板に従って左折し深い森の中の1車線路を登ってゆく。
しばらくすると視界が拓け、硫黄の臭いが鼻を突く駐車場に出た。

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B3を置いて山の中を15分ほど、せっせと歩いて「川原毛大湯滝」に到着。
一度訪れてみたかった、温泉が文字通り滝となって落ちてくる天然の露天風呂である。
いやもう、ワイルドにも程がある(笑)。
平日ながら何組かの先客もおり、人気の高さが伺えるが、それも大いに頷けるキョーレツな温泉だ。
せっかくなので20mの滝が落下するポイントに入ってみると、激しい水しぶきが目に入って痛い。
味はかなり酸っぱく、強い酸性の湯であることがよくわかる。
荒行に来たわけでは無いので少し離れた滝壺に退避、40℃をやや下回ると思われる適温の湯に浸かりながら、大自然の露天風呂をのんびりと楽しんだ。
ここは北海道/知床の「カムイワッカの湯の滝」にも匹敵する、本当に素晴らしい野天湯だと思う。
・・・が、復路は殆どが上り坂で、上半身ハダカで歩いたにも関わらず、駐車場につく頃にはすっかり汗だくとなっていた(涙)。

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K51を戻る途中で、B3のオドメーターが20万kmを突破した。
街中や高速道路上などではなく、こんなどえらい山の中でその時を迎えてしまったことが、いかにもこのB3らしく思えた(笑)。
泥湯温泉から西に向かうK310は景色も良く、走って楽しい山坂道。
B3を買った直後の2005年9月に一度走っているが、当時よりも改良されてとても走りやすくなったように思える。
センター・ラインは無いが実質2車線幅に近く、「川原毛地獄」での小休止を挟んで誰もいないワインディングを存分に堪能した。
予報を無視したかのような晴天にも恵まれ、もはや言うことは無い。
陽も傾いてきたので、R108で宿へと向かうことにする。

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ところが県境のトンネルを越えて宮城県に入ると、先ほどまでの好天がウソのような雨模様。
山を越えると天気が変わるってーのは何度か体験してはいるが、ここまでの豹変も珍しい。
雨の中を大型トラックの後について淡々と走り、鳴子温泉の東にある「中鉢[ちゅうばち]温泉」に到着した。
今回もまたリーズナブルな宿だが、温泉は内湯/露天ともに素晴らしく、晩飯も丁寧に作られているようでとても旨い。
グランド・ツーリングも終盤、明日もどこかで晴れてほしいと願いつつ、雨音を聴きながら眠りに就いた。

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本日の走行距離は、254km。
走行時間は5時間7分、平均速度は49.6km/hだった。
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コメント 8

acatsuki-studio

須川温泉〜K282はホントに先日、走ったばかりです。素ン晴しい道でした。
by acatsuki-studio (2013-09-28 23:57) 

MT

被災地にはぜひ足を運んで、実際に見るべきですね。私もこの3連休に実際に行き、見て感じ、自分の考えが浅はかだったことを思い知りました。特に陸前高田では絶句しました。被災地の失われた生活を取り戻すまでまだ時間がかかりそうです。少しでも力になれるようにと思います。
by MT (2013-09-29 04:44) 

wata

acatsuki-studioさん、こんにちは。

栗駒山周辺には気持ちのいい道がたくさんありますよね。
私が初めてこのエリアを走った頃の国道は未改良の1.5車線路ばかりでしたが、現K282の栗駒道路はピカピカの2車線で、「さすがは有料道路!」と感動した覚えがあります(笑)。

by wata (2013-09-29 08:45) 

wata

MTさん、こんにちは。

はい、現地に立つと、WebやTVを見ているだけじゃわからないってことを痛感させられますよね・・・。
震災から2年以上経ってから訪れてもそう感じるのですから、直後の状況はもはや想像を絶するものだったのだろうと思います。
これからも機会を作って訪れて、現地の経済活動にほんの少しでも資することができればと考えている次第です。

by wata (2013-09-29 09:22) 

amataro

川原毛大湯滝はダイナミックですね こんな露天風呂は他じゃなさそうです 
しかし一日にそんなに湯につかってふやけやしませんか?

by amataro (2013-09-29 19:38) 

wata

amataroさん、こんにちは。

川原毛大湯滝、話には聞いていましたが、実際に行って見てビックリ仰天しました。
こんな温泉があるなんて、ニッポンは素晴らしい国なんだと改めて思いましたよ(笑)。
ちなみに私、湯に浸からなくても人間的にふやけているので大丈夫です(←?)。

by wata (2013-09-29 22:41) 

こだま

昨年秋、栗駒山に登ったあと大日湯に入った事を思い出しました!
しかも川原毛大湯滝は憧れの温泉です・・・
う~む、まずい、行きたくなってきた・・・
by こだま (2013-10-01 09:02) 

wata

こだまさん、こんにちは。

川原毛大湯滝は、是非行くべきだと思いますよ!
ここは私がこれまで浸かった温泉の中で、トップ・クラスの面白さでした。
温泉と言うよりもアクティビティの領域に近く(汗)、アドベンチャー気分をタップリと味わえます。
従って、通常の温泉から想起される「癒し」とか「リラックス」などはありません。
ご了承ください(伏)。

by wata (2013-10-01 20:40) 

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