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紀伊半島ツーリング[2] [drive/touring]

前回までのあらすじ】
三重県のローカル国道で、再始動不能に陥ったB3。
しかしながらその症状はなぜか自然に解消、世話になったロード・サービスの方に温かく見送られながら、オッサンは再び旅を続けるのであった・・・。

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伊勢柏崎からK68を南下し、R260に復帰する。
この道は予想通り気持ちの良いワインディング・ロード、旅に復帰できた嬉しさも相まって、2速⇔3速で軽くタイヤが啼くレベルの走りが続く。
幹線道路のR42に合流、他のクルマとともに走りながら、昼飯はどうしようかと考える。
考えているうちに、R42をタラタラと走るのがつまらなくなってくる。
で、尾鷲を過ぎたところでR311へと左折。
目論見通り交通量は一気に激減、長いトンネルの先には青く輝く熊野灘に臨む極上の屈曲路が待っていた。

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このような道を走らせると、B3はライト・チューンで与えられた少々やんちゃなキャラクターが顔を出す。
リア側を固めたスタビライザーによりオーバー・ステア方向へのセッティングとなっていることに加え、穏やかながらも確実に差動を制限するヘリカルLSDが強いトラクションを発生させる。
結果、B3は「妙にアクセルで曲がるクルマ」となり、コーナリング時に不用意なパワーを与えると想定以上にイン側へと巻き込むような挙動を見せることとなる。
更に、やたらグリップ力の高いヨコハマ・アドバン ネオバAD08からマランゴーニ・ミトスへとタイヤを履き替えたことで、スロットルによる挙動変化の幅はむしろ拡がったような印象がある。
快楽と恐怖とがせめぎ合う、その一点を探りながらのドライビング・・・と言うと大袈裟だが、B3が従前よりもシビアなアクセル・ワークを要求するようになっていることは間違いない。
そのことを何度も痛感させられながら、少ない集中力を総動員してのドライビングが続く。
小さな漁村まで下りてきたところで、小休止。
暖かな春の風が、冷たい汗を青い海へと運び去ってくれた。

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K70で山の中をR42まで戻り、改めて昼飯を喰うべく道の駅「熊野きのくに」に立ち寄ってみる。
2時間のロスタイムもあり、レストランなどでゆっくりと喰うつもりは無いので物産品コーナーなどを物色したところ、お誂え向きに発見したのが「さんま寿司」。
紀州熊野の郷土料理と言うことで、旅の飯にピッタリの一品である。
サンマの塩加減や酢飯の塩梅がこれまた絶妙で、あっという間に完食だ。
コンビニのおにぎりも止む無しと考えていただけに、思いがけずご当地の旨いもんを喰えて何よりであった。

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当初の予定通り潮岬へ行くのであれば、海沿いのR42が最短である。
ただしクルマも多く、走っていてひとつもおもしろくない。
そこでR309へと舵を切り、R169を東進。
大幅な遠回りとなるが、山の中を快走して最南端を目指すこととしたのだ。
ダム湖に沿って1-1.5車線となったR169には予想通りクルマの影は無く、マイペースの山岳ドライブが続く。
・・・が、七色ダムの壁に「この先国道168号線へいけません」との看板が立っている。
そう、2011年9月の台風12号による記録的な大雨で、大好きな紀伊半島の道路網はズタズタに裂かれてしまったのだ。
今回のツーリングはその復旧を待って来たと言う側面もあるのだが、山間部では今もなお不通区間が残っているこの現実に、改めて被害の大きさを思い知らされる。
看板に書かれた地図や地名はよくわからなかったが、「迂回路」の文字が読めたので、例によって行けるところまで行ってみることにした。

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改良2車線区間となったR169を北山川に沿って走っていると、旅の好奇心を大いに刺激する吊橋を発見。
小さなクルマなら通れそうだなぁ・・・と思っていたら、本当に向こう岸から軽自動車がやってきたので仰天する。
大して速度も緩めずに、橋をぐいんぐいんと波打たせながら渡りきるその様を、成すすべも無く鳩豆状態で見送る46歳。
ひょっとして、B3でも渡れるんじゃないか・・・いや、そうやって調子に乗るのが俺の悪いところだ・・・でも、ちょっとだけなら・・・危ないからやめろって・・・と言うことでバックでソロソロと進入してみたのだが、それでも橋が揺れて恐ろしいったらありゃしない。
ビビりまくって元の岸まで戻り、ふと橋の入口を見上げると、「重量制限1tまで」と書いてある。
ダメじゃん、B3(←1.5t)。

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未改良と改良済の区間を交互に繰り返し、R169は奈良県境の山の中へと入っていく。
が、瀞峡付近までやってきたところで、ついに通行止めに出くわした。
このまま南下することはできないが、傍らの小さな看板には「十津川方面へは行けます」と手書きで記されており、その矢印は脇の旧道を指し示している。
どんだけ狭い道なんだろうと不安になるが、ここから引き返すと言う選択肢は自分には無いので、崖っぷちの旧R169を進んでいく。
と、その先で路面が大きく崩落しており、国道そのものが無くなっているではないか・・・(汗)。
シャレにならんな~と呟きつつ、林道と思しき迂回路の迂回路へとB3を乗り入れる。
この道は一応舗装されてはいるものの、荒れたリアル1車線でガード・レールもカーブ・ミラーも殆ど無い。
路面に注意しながら暗い森を独りぼっちで上っていくとやがて少し広い尾根道に出るのだが、今度は周囲の崖から落ちた落石が散乱しており、ところどころで停車→落石排除を余儀なくされる。
俺はなんでこんなところを、アホみたいにひたすら走っているのだろう・・・。
そんな自問を何度か繰り返しているうちに、ようやく十津川温泉の家並みが見えてきた。

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陽が山の端に隠れ始めている。
B3のトラブル・シューティングに加え、どえらい山道リルートで時間を喰ったため、最南端の潮岬行きは次回の楽しみとして今日はもう宿へ向かうこととする。
十津川からR168で南へ走り、R311/熊野街道を西にマイペース・クルージング。
前走車をことごとくブッコ抜きながらK198-R371/龍神街道をカッ飛ばし、和歌山県/龍神温泉郷の入口にある「民宿せせらぎ」に到着した。
美人の湯の誉れ高い龍神の重曹泉はヌルヌル感が素晴らしく、のんびり浸かって風呂から上がれば、グッと冷え込んできた山間の夕刻にも身体は冷えることが無い。
更に驚いたのが夕食で、山菜や野菜の煮物/焼物/揚げ物/和え物、アマゴの塩焼き、猪肉と鹿肉のジンギスカン、さらには野菜たっぷり味噌仕立ての猪鍋など、山幸彦もビックリのボリュームと旨さである。
そんな料理に舌鼓を打ちながら宿のおかみさんと話をさせてもらったのだが、昨年の台風では谷底を流れる日高川が氾濫して宿の目の前まで迫ったり、土砂崩れで一帯が孤立しライフラインが全て寸断されるなど、大変な目に遭ったのだと言う。
今も通行止めや復旧工事中の道は多く、実際に迂回で難儀もしたが、それでも紀伊半島の道は楽しく、喰いものは旨く、温泉は気持ちよく、人も温かい。
いいドライブだったな・・・と今日一日を想い返しつつ、清流のせせらぎを耳にしながら眠りに就いた。

・・・つづく。

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コメント 20

M郎

紀伊半島、面白そうですね。
大阪方面から、龍神スカイライン・龍神温泉に向かうつもりでしたが、急に福岡の水炊きが食べたくなったので中国・四国GTに変更、紀伊半島は次回の楽しみにすることにしました。
紀伊半島ツーリング(2)を早く見ていれば、モチベーションが上がり、こちらにしていたのに。(涙)
では、行ってきます。
by M郎 (2012-03-25 01:58) 

つくばの松

素敵です・・・・(涙)

さんま寿司、アマゴ、猪、鹿、山幸彦(ってどんな食べ物?)
私は伊勢、志摩までは行ったことはありますが、そこから南は行ったことはないので大変興味が湧いてきました!・・・・そろそろ和歌山ラーメン登場?

注 ①橋から飛び降りる人を見つけたら、通報してください。
  ②民宿の部屋にいかにも怪しい輩が表われたら、通報してください。


by つくばの松 (2012-03-25 07:17) 

acatsuki-studio

もうこれを読んでオレもロングをかましたくてたまりません!ちゃんとDに入庫させてメンテナンスして、4月になったら少しは時間が取れると思うので(1泊とかは無理だけど)自分なりのロングドライブに行くつもりです!

さんま寿司、旨そう!
by acatsuki-studio (2012-03-25 07:56) 

wata

M郎さん、こんにちは。

いよいよ春のロング・ツーリングに出発ですね!
福岡で水炊きを喰って、中国/四国を走り放題走りまくるなんて、羨ましいにも程があります。
いいなぁ、オレも行きたいなぁ・・・(涙)。

紀伊半島も、素晴らしく楽しいツーリング・エリアですよ。
私も大好きで何度となく訪れており、帰ってきたばかりなのにもう再訪したくなってます(笑)。

by wata (2012-03-25 11:09) 

wata

つくばの松さん、こんにちは。

「山幸彦」は、日本の神話の登場人物です。
調子に乗って書いてはみたものの、「山の幸」とはまったく関係ありませんし、もちろん食べ物でもありません。
私も松さんも、大間違いです(涙)。

昨今は熊野古道などがブームとなっているようですが、それでも紀伊半島の山中はまだまだ俗化されていない良さが多く遺されていると思います。
もちろん、橋から飛び降りたり民宿で不審な挙動をしたりするような人など、いるはずもありません。
安心して、お出かけ下さい(汗)。

by wata (2012-03-25 11:09) 

wata

acatsuki-studioさん、こんにちは。

この付近の名物として「めはり寿司」は知っていたのですが、さんま寿司は今回の旅で初収穫となりました。
ずいぶん昔に仙台で喰った、秋口に塩釜辺りで揚がったとれとれのさんまを寿司に握ってもらったのも最高でしたけど、この押し寿司はまったく違った角度からさんまの旨さを発見させてくれたような気がしています。

このBlogを読んでくれている方が「ロング・ドライブに出たい!」と思うようになってくれるのって、ものすごく嬉しいんですよ(笑)。
一泊二日は無理でも、仙台起点であれば「前泊+丸一日」で非日常を走りまくれるエリアはたくさんあると思います。
MiToでロング、思いっきりかましちゃって下さいね!

by wata (2012-03-25 11:11) 

shima

うわぁ懐かしいなぁ。このあたりの山中で(玉置神社あたり)大変な思いをして走った記憶があります。日本の田舎そのものの雰囲気があっていいところですよねぇ。大雨の影響でずたずたとは聞いておりましたがひどいことになっていますね。。。
しかし吊り橋崩B3の重さで落しなくてよかったですね。
by shima (2012-03-25 11:37) 

s_saigo

1t制限の橋は結構真ん中まで行っているような…。
ただ、このレポートが読めているといることは、崩落は免れたんですね。
この橋での跳躍写真、すごいです。
よほど滞空時間ことと想像してます。
by s_saigo (2012-03-25 13:02) 

wata

shimaさん、こんにちは。

そうそう、R169の迂回路として走った林道は、途中に玉置神社への分岐がありました。
shimaさんは逆方向(十津川村から北山村)に走ったんですよね。
正にご同慶の至り・・・と言いたいところですが、迂回路としてやむを得ず走った私と、自ら好き好んで走ったshimaさんとでは、常人との隔たり具合が著しく異なると思われます(汗)。
http://whiteisland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24

台風の爪痕は今も予想以上に深く残されており、ちょっと衝撃を受けるほどでした。
が、仰るとおりこの付近はとてもいいところですので、shimaさんも是非またお出かけ下さいね!
ロードスターなら軽いので、吊橋も楽勝だと思われます(←1t以上はダメだってば)。

by wata (2012-03-25 14:39) 

wata

s_saigoさん、こんにちは。

この橋は「上瀞橋」と言うそうで、長さは170mほどあるようです。
B3を進めたのは真ん中ぐらいだなんてとんでも無い、せいぜい20-30m程度でして、もうこれ以上は不可能だとばかりに撤収させていただきました(汗)。
橋上でのジャンプについても、着地時に橋が揺れないようにランディングには大いに気を遣いましたよ・・・。

と言うことで、上瀞橋では1tを超えるクルマの通行や橋の上での跳躍は、危ないのでくれぐれもマネをなさらぬよう(←しないって)。

by wata (2012-03-25 14:39) 

amataro

紀伊半島、海と山が同居していてとても良さそうなところですね
なんか時間もゆっくり流れてそうな感じを写真から受けました

しかし道が盛大に崩れてますが、これは引きますねぇ
タイミングよく走ってたらひとたまりもないです。。。


by amataro (2012-03-25 23:03) 

wata

amataroさん、こんにちは。

伊豆半島や房総半島に較べてデカさハンパ無い紀伊半島ですが、デカいだけでなく実に深くて濃いエリアだと思います。
海も山も川も自然が圧倒的に優勢で、人やクルマはちっぽけ感が炸裂ですよ(笑)。

それだけに、自然が猛威を振るった痕のリアリティには思わずたじろいでしまいます。
この崩落箇所は国道なのですが、手をつけることすらできないような感じです。
写真じゃわかりにくいんですけど、小型のパワー・ショベルも土砂に飲み込まれていすからね・・・(汗)。

by wata (2012-03-25 23:26) 

一孤人

オレも以前、山梨で強制迂回させられて網の吊り橋ぉ渡ったことがあります。
アレが縮まっちゃって、しばらくシッコが出ませんでした。(藁)
by 一孤人 (2012-03-26 11:10) 

naofuming

秋刀魚寿司とは、良い経験をされましたね。
あれは季節限定なのです。
確か、尾鷲に秋刀魚寿司の名店がありますが、シーズンオフの夏は休業されるのです。
亀の子にならない林道なら、どこでもgoと思っておけば、林道は怖くありません。
by naofuming (2012-03-26 14:15) 

wata

一孤人さん、こんにちは。

迂回路が吊り橋って、すごいですねぇ・・・。
むしろ、その吊り橋を迂回したくなるんじゃないかと思われます(汗)。

調子に乗ってB3を乗り入れたりジャンプしたりしていますが、やっぱり吊り橋は怖いです。
私も袋が急激に縮小し、一時的に生産停止を余儀なくされました(←何の生産だ?)。

by wata (2012-03-26 20:51) 

wata

naofumingさん、こんにちは。

一般に秋刀魚と言えば文字の通り秋が旬ですが、この寿司には冬にかけて三陸から熊野灘に下ってくるサンマを使うんですよ。
秋よりも脂が抜けているのですが、そのほうがむしろ押し寿司のネタには適しているのです。
そのサンマを開いて軽く塩漬けにし、ユズやダイダイで香りをつけてから酢飯に乗せて押したもので、昔から熊野灘沿岸一帯で食べられていた郷土料理です。

・・・って、単なるネットの受け売りじゃないのか?(←正解)

by wata (2012-03-26 21:09) 

zdm1929

こんにちは
私もこのあたりの被害の大きさに驚きました。
去年は震災にばかり目が行き、恥ずかしながらすっかり忘れていましたが、未だ水没して壊れたままの家屋や基礎だけになってしまった建物がたくさん残っていて・・・。
おっしゃるとおり、このエリアはデカくて深いですね。壮大な自然やところどころに見られる修験道の痕跡など、ゆっくりと散策してみたい思いにかられました(^^)
by zdm1929 (2012-03-27 10:57) 

wata

zdm1929さん、こんにちは。

そう、そうなんですよね・・・。
東日本大震災の被害があまりに大きくて忘れがちなのですが、台風12号による紀伊半島の被害は未曾有のレベルだったと聞きます。
なので、復旧をこの目で確かめたかったこともあり、訪れてみたのですが・・・。

この付近は自然が豊かなエリアなだけに、その自然が猛威を振るうとどうしてもダメージがデカくなってしまうんですよね。
でも、やっぱりいいところだと思うんですよ、紀伊半島。
私もいずれまた改めて、のんびり周りたいと思っている次第です。

by wata (2012-03-27 21:15) 

mitton

いつも素晴らしい写真の数々を楽しませてもらっております☆
ツーリング記事でwataさんの右に出るものはいませんね^^

昨年、災害を通して北海道の地名の由来を知りましたよ。
by mitton (2012-03-28 10:43) 

wata

mittonさん、こんにちは。

毎度ご覧いただき、どうもありがとうございます。
ですが、私なんぞのしょぼい旅日記などよりも遥かに素晴らしい記事を書く方はたくさんいらっしゃいますし、そもそも右に出るとか出ないとか、優劣をつけるもんではございません。
引き続き、さらさらら~と読み流していただければ幸いです(伏)。

奈良県の十津川村と、北海道の新十津川町。
台風12号の被害に心を痛め、新十津川町の人々は義援金を募って十津川村に届けたんですよね。
双方の関係は以前から知っていたので、この話を聞いたときにはちょっと感動しちゃいました(涙)。

by wata (2012-03-28 19:57) 

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