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GT2010秋[2]10月18日:阿蘇漫遊 [drive/touring]

深夜。

ガラガラッ!と部屋の引き戸が開き、ビックラこいて飛び起きた。
見れば、廊下の灯りを背景に立ち尽くすハゲオヤジのシルエット。

一体、何事だ?
夜這いか?
44歳にして、こんなハゲオヤジにヤられてしまうのか?

「あ・・・こりゃ失礼しました~」

・・・どうやら、酔っ払って部屋を間違えた模様である。
んもー腹立つなぁ、ハゲオヤジ(涙)。

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二度寝を経て迎えた大分県・深耶馬渓の朝は、10℃を割り込んで寒いほど。
屹立する柱状節理の奇峰の向こう、空にはうっすらと白い靄がかかっており、ピン、と張り詰めた冷たい空気が心地よい。
紅葉期には悪夢のような渋滞と人ごみで二進も三進も行かなくなるとのことだが、今日はオフ・シーズンの月曜日の朝。
土産物店の前の落ち葉を掃くおばちゃんや、小さな祠の蝋燭に火を灯すおじさんの他に、まだ人の動く気配は無い。
朝風呂に入り、飯を平らげ、「今日もまた、事故らず壊さず捕まらず」と低く唱えて宿を後にした。

今日は、阿蘇を走る。
ここからまっすぐ南へ下ればすぐに阿蘇エリアとなり、今夜の投宿地である南阿蘇地区までも大した時間はかからないはずだ。
が、まっすぐ走らない。
広大な九重・阿蘇地域には魅力的な道がたくさんあるとの由、今日は一日このエリア内に留まり、景色を愛でつつそれらの道をのんびりと走り回ってくれようとの魂胆である。
雨と霧と休日の混雑でロクに走ることも叶わなかった、4年前の意趣返しでもあるのだ。
「ツーリングマップル」でチェックすると、阿蘇へと南下する道で気持ち良さそうなルートは3つ。
どれにしようかと10秒ほど考えた結果、全部走ることにした(笑)。

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深耶馬渓からR210まで出、西に走って天ヶ瀬からK12経由でアクセスしたのがルートその1=広域農道/ファームロード
クルマも信号も人も無く、4速メインのハイスピード・ランがひたすら楽しめる凄い道だ。
熊本県に入り、R367を越えてもそのダイナミックなドライビングは延々と続く。
このままこのペースで走り続けたらアタマがパーになるんじゃないかと思い始めた頃、黒川温泉の手前でR442に合流して終了。
クール・ダウンを兼ねてちょっとした脇道に逸れれば、高原を渡る秋風にススキの穂がゆったりと波を打っていた。

阿蘇はもう目と鼻の先だと言うのに、ここから再び大分県へと戻る。
ルートその2=K40は、打って変わって森の中や渓谷沿いを行く緑豊かなワインディング・ロードだった。
1.5車線がメインでクルマもそこそこ走っていたため、前走車に続いて大人しく走り、抜けるところで遠慮なくブッコ抜く。
九酔渓の深い谷間をくぐり抜けて北上を続け、R210へと復帰した。
なおここから東の水分峠へと向かう途中、登坂車線から軽トラがウィンカーもつけずに飛び出してきた。
対向車もいたので右に逃げるワケにも行かず、マジでサイド・ミラーぐらいはヒットするかと思ったが、その軽トラはB3のクラクションに驚いて登坂車線に逃げ戻り、間一髪セーフ。
「ツーリング三無い宣言」の一角、「事故らず」が崩れそうになった瞬間である。
あぶねーよ、ホント(汗)。

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水分峠から走ったルートその3は、最もメジャーなK11/やまなみハイウェイ
森の中を行く2車線路、センター・ラインは全線イエローなのだが、理解あるドライバーの方々に道を譲っていただいたりなんかしながら、快調に走ってゆく。
長者原付近からは景色も拓け始め、雄大な阿蘇の風景が全てのウィンドウに展開する。
2速⇔3速でワインディングを登りきると、瀬ノ本高原から先には再び日本離れした広大な草原が拡がっていた。
すんごいところに来たもんだ・・・と感動しながら走っているうちに、ガソリン残量警告灯が点灯。
カルデラの中にある阿蘇の街まで下り、ハイオク・ガソリンをB3に満たしてから、タイトな屈曲路/R212で再び外輪山へと駆け上がった。

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阿蘇を代表する景勝地、大観峰
前回は天候に恵まれなかったのだが、今回はもう文句無しである。
平日にも関わらず賑わうパーキングにB3を駐めて展望所まで歩けば、晴天の下に素晴らしい絶景が迎えてくれたのであった。
小腹が空いたので、売店でサツマイモ入りと辛子高菜入りと二つの饅頭を買う。
B3のラゲッジ・ルームからコールマン製のフォールディング・チェアを出し、人のいない草原へと歩み入る。
チェアにどっかりと座り、カルデラの向こうに横たわる阿蘇五岳を眺めながらかぶりついた饅頭は旨さ100倍、忘れ得ぬ味となった。
旅に出て本当に良かったと、改めて思った。

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大観峰を出て、K12/菊池阿蘇スカイラインを西に走る。
外輪山の稜線上をゆったりとうねる文字通りのスカイラインで、空の広さが実に印象的だ。
4速から5速にシフト・アップし、ハイスピード・クルージングを存分に堪能した。
K339/ミルクロードへと左折すると、道は緩やかな下り坂となる。
周囲には引き続き広大な風景が展開しているのだが、私の関心は他にあった。
やがて小さな左折路を見つけ、1.5車線の荒れたアスファルトをゆっくりと下っていく。
捜していた風景は、その先に拡がっていた。

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それが、この場所。
通称、「ラピュタの道」。

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誰が名づけたのか定かでは無いが、一部のライダーの間でそう呼ばれているこの道は、天空と地表とを結ぶ圧倒的な高度差が、一種異様とも思える素晴らしい景観を生み出している。
ガイドブックやマップ等には一切載っておらず、出発直前にインターネットで偶然見つけて是非ともこの目で見たいと思っていたシーンが今、眼前眼下に展開しているのだ。
本当にこんな場所があったのか・・・と、阿蘇の懐の深さに改めて驚きを禁じ得ない。
呆けたように暫くこの光景に見入ってから、ミルクロードへと戻って外輪山を下っていった。

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大津の街まで下り、休む間もなく再び阿蘇のカルデラを目指す。
アプローチに選んだルートはK28の旧道、俵山峠
ワンボックス・カーやトラックが新道の俵山トンネルへと流れていくのをニンマリしながら横目で見つつ、DSCをカットしてゲトラーグを2速へと叩き込んだ。
マランゴーニ・ミトスの放つ甘い悲鳴を残し、巨大なウィンド・ジェネレータの建つ峠を目指して駆け上がるB3。
連続するタイト・コーナーには悉くブラック・マークが刻まれており、地元に於けるこの道の立ち位置が良くわかる。
峠を越え、駆け下り、何食わぬ顔をして一般車輌の行き交うK28に復帰。
陽も傾き始めた阿蘇南麓、再びスロットルを開けてK111/阿蘇パノラマラインをぐんぐんと上っていき、草千里展望所に出た。

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B3を停め、降りてみる。
夕刻の阿蘇はグッと冷え込んできており、思わず旧いMA-1を羽織ったほどだ。
下界は夕靄に霞んでいたものの、天上界の各部はそれぞれが青い空と斜光に輝いている。
明日以降の予報では暫くスカッとした晴天は望めないため、宿に約束したチェック・イン時刻を気にしながらも、ギリギリまでこの素晴らしい景色を網膜に焼き付けていた。

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すっかり暗くなったパノラマラインを引き返し、R325から闇に包まれた細い山道を辿って宿に到着。
地獄温泉「清風荘」は湯治部併設の伝統ある温泉宿で、混浴の泥湯に浸かりながら、地元のおばぁちゃんや車中泊で独り旅を続ける若者と温泉談義に花が咲く。
今日の晩飯は、地獄鍋。
猪肉を味噌仕立ての鍋で、鴨肉と鹿肉を鉄板焼でそれぞれ喰わせる名物料理で、味も量も大満足である。
明日は早起きして早朝の阿蘇へ登ることとし、早めの床に就いた。

本日の走行距離は、325km。
走行時間は6時間12分、平均速度は52.3km/hだった。

ちなみに、前泊地から宿までは直行すれば距離は僅か80km、2時間もかからなかったはずである。
まったく、寄り道にも程がある(笑)。

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コメント 18

J3

素晴らしいですねぇ、ラピュタの道。

阿蘇周辺、またいずれ走るであろう道。
その機会が待ちきれなくなりそうです。


by J3 (2010-10-27 21:52) 

tom

wataさん、こんばんは。

いやー、気持ち良さそうですねぇ。
カラッと晴れた中を風切って走るのは、さぞかし最高だったでしょう。
いいなあ・・・ロングツーリング行きたいなぁ。(ビョーキ)

それにしてもラピュタの道、すごいところですね。
飛行石を掲げたら飛んだりするんでしょうか?(笑)

九州エリアは未だ未踏の地ですが、いつか訪れてみたいものです。。
by tom (2010-10-27 22:04) 

wata

J3さん、こんにちは。

この道の存在を知ったのは出発の数日前で、半信半疑で行ってみたらすんごい景色に仰天しました。
他にも見どころ走りどころ満載の阿蘇エリアは、やはり定期的に訪れる必要アリですね(笑)。

by wata (2010-10-27 23:01) 

wata

tomさん、こんにちは。

ホント、ドライビングには最適な季節となりました。
関東から九州へは行くだけで半日を費やしますが、その価値は十分にあると思いますよ。
高速道路を使えば、その日のうちに阿蘇へ入ることも十分可能です。
「飛行石を掲げたら云々」の意味が良くわかりませんが、若いうちに、是非とも独りで(笑)、行ってみて下さいね。

by wata (2010-10-27 23:16) 

知床のオジロワシ

はじめまして、
明るい綺麗な写真ばかりですね。

昨年4月~横浜の自宅を旅立ち、大分で単身赴任中のものです。
小生のストレス発散コースの紹介で、勝手に親近感を持たせて頂きました。

関東の人間からすれば、あの阿蘇の大地や、大観望から菊池渓谷、阿蘇パノラマロード(K111)は最高ですよね。
あっ、やまなみハイウェイの長者原付近も最高ですが...

また、お邪魔させて頂きます。
by 知床のオジロワシ (2010-10-28 07:07) 

falconB3

すばらしい景色ですね。
阿蘇山は大爆発するまえは標高10kmにもなる
超高山だったらしく、何やら珍しい景色が
あるのではないでしょうか。
オヤジはかないませんね。
軽四も。
by falconB3 (2010-10-28 08:51) 

shima

今はラピュタの道といわれているんですね。昔何度か行ったことがあります。あの先端から下界を見たら”ひとがごみのようだ”(byムシカ)とおもえるのかもしれません。。(笑)
やはり阿蘇周りは別格ですね。。また行きたいです。。
by shima (2010-10-28 19:25) 

wata

知床のオジロワシさん、はじめまして。

ようこそお越し下さいました。
あまり意味も無く続けているBlogではありますが(汗)、よろしければまたお立ち寄り下さい。

今回じっくり走って思ったのですが、阿蘇には阿蘇だけでしか見られない景色がたくさんあるんですね。
そんな道で自分のクルマを走らせるのはドライバー冥利に尽きますし、はるばるやって来て本当に良かったと思ってます。
「みんカラ」も拝見しましたが、そんな阿蘇にひょいっと行ける環境が何とも羨ましい限りです(笑)。

by wata (2010-10-28 19:36) 

wata

falconB3さん、こんにちは。

世界最大級のカルデラってのは、やっぱりダテじゃありませんでした。
もう何もかもがダイナミックで、素晴らしい景色と道の連続です。
MV AGUSTAでもB3でも、是非一度走りに来られることを強くお勧めする次第です。
なおその際、登坂車線の軽トラックと深夜の酔っ払いハゲオヤジには、くれぐれもご注意下さい(汗)。

by wata (2010-10-28 19:36) 

wata

shimaさん、こんにちは。

九州男児のshimaさんは、阿蘇を何度も走っているんですよね。
「byムシカ」がやはり良くわからないのですが、下界はあまりに下すぎて人の姿を肉眼で捉えることはできませんでした(笑)。
しかし、阿蘇は本当に素晴らしいドライビング・エリアです。
いつかまた行きますよ、きっと!

by wata (2010-10-28 19:41) 

sako

こんばんは♪

臨場感たっぷりのツーリング記事を拝見させていただきました♪
ラピュタの道は知りませんでした。 事前に知っていたら、今夏帰省した際に行ってみたのですが・・・残念
ココって、クルマが走れる幅なんでしょうか?
by sako (2010-10-28 20:04) 

wata

sakoさん、こんにちは。

そうそう、sakoさんもこの夏に阿蘇へ行かれたんですよね。
この「ラピュタの道」は外輪山からカルデラ底部へと一気に降りる、言わばショートカット・ルートです。
牧場用とか農耕用とかそんな感じでしたが、1-1.5車線でB3も問題なく走れました。
私は途中でUターンしましたけど、そのまま下りて行けばK149に出たはずです。
次回は是非、行ってみて下さいね!

by wata (2010-10-28 20:56) 

zdm1929

こんにちは(^^)
いやいや、すばらしいです!阿蘇!!
ウワサには聞いてましたが・・・。
サスガ、世界最大級のカルデラです。
それにしても、スゴイですねぇ「ラピュタの道」(驚)
ガイドブックやマップに一切載ってないって言うのもステキです♪

by zdm1929 (2010-10-29 09:38) 

wata

zdm1929さん、こんにちは。

いやいや、こんなチンケな写真ではその素晴らしさの1%もお伝えできません。
実際に目で見てクルマを走らせれば、阿蘇の雄大さに仰天すること請け合いですよ。
「ラピュタの道」、ネット上で検索するとたくさんの情報を見ることができますが、少なくとも私が持っているガイドブックやツーリングマップルには載っていませんでした。
でも最近はネット上の口コミがマスに「逆輸入」されることも多いので、この道もいずれ掲載されるかもしれませんね。
いずれにせよ行く価値ありまくりですよ、阿蘇(笑)。

by wata (2010-10-29 23:13) 

はじぱぱ

wataさん
こんばんは。私は熊本県の菊池育ちなので、ミルクロードから大観峰は原チャリ時代から良く行っていました。阿蘇独特の景色も楽しめるので良い道ですよね。ミルクロードには実は上り坂なんですが、下り坂に見える場所があってそこでニュートラルにして車がバックするのが不思議な場所があるんですよ。

今日は家族で千葉から甲府まで日帰りして来ました。台風で出かける車も少ないだろうと逆張りでしたが。工事渋滞と事故渋滞で途中込んでいました。

しかし、九州まで一日で行くのですね、すごいですね。
私はまずは、大阪までと思っています。
by はじぱぱ (2010-10-31 01:51) 

wata

はじぱぱさん、こんにちは。

菊池にお住まいだったのであれば、阿蘇はもう庭のようなもんですよね。
いわゆる「幽霊坂」がミルクロードにもあったのは知りませんでしたが、ホントに気持ちよく走れる絶景の道だと思います。
九州までは自宅から1,000km以上ありますが、往路は何となく一気に行けちゃいます。
が、日常に帰る復路は辛いんですよ、ハイ(涙)。

by wata (2010-10-31 17:11) 

DION

かなり出遅れましたが
2010秋のグランドツーリング、
またまた好天に恵まれて
雄大な景色とスピード感溢れる美しいお写真の数々、
楽しませていただいております。
福岡に3年ほど住んでいたので
佐賀や長崎、阿蘇は日帰りコース。
友人たちと阿蘇まで行ったことを懐かしく思い出しました。
当時はモントリオールブルーのE36318i。
阿蘇、こんな風に撮影してみたいです!
by DION (2010-11-03 22:44) 

wata

DIONさん、こんにちは。

福岡にお住まいだったんですね。
では、BMWで阿蘇を駆け抜けていたんですねぇ。
今回のグランド・ツーリング、スカッとした青空はこの日までで、以降は曇天や雨天のドライブとなりました。
それでも、いちばん晴れてほしかった阿蘇で晴天に恵まれましたので、もう言うこと無しです(笑)。
写真もいろいろ撮りましたが、例によって実際の素晴らしさの1%も再現できておりません。
ご承知おき下さい(涙)。

by wata (2010-11-03 23:11) 

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