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昔乗ってたクルマ(3)メルセデス・ベンツ190E2.3-16[2] [automobiles except My B3]

1992年から乗っていた、1986年式メルセデス・ベンツ190E2.3-16の話の続きです。


このクルマ、とにかく操作感がゴツい。
ドアはまるで金庫のそれのようで、ものすごい重量感です。
たまにリア・シートに人を乗せるときなど、あまり使っていないせいか、普通の感覚ではドアは固くて開けられません。
ステアリングはもちろんパワードですが、そのアシスト量は必要最低限という感じ。
KP61時代から愛用している36Φのイタルボランテ「フォーメル」に換えていたせいもあるとは思いますが、山道を走った後にはやや筋肉痛を感じます。
オルガン式のアクセル・ペダルはブレーキかと思うほどの重さですし、クラッチ・ペダルもまた然り。
シフト操作だけは軽くて、温まればスコスコ入りますが、パネル・スイッチ類などは突き指するかと思うほどの固さでした(←これは言いすぎか・・・)。

で、走り出して驚くのがその強烈な剛性感。
6年落ちであるにも関わらず、とにかくボディのガッシリ感をハッキリと体感できるほどの凄さ。
それはもう、感動的ですらありました。
数値上はどうだか知りませんが、その後に新車のE36/M3に乗り換えたときに、「ボディ剛性は2.3-16の方が上だな」と感じたほどです。
ではその代償として、やはり重いのか?
・・・2.3-16/MT/日本仕様の車輌重量は、カタログ値で1,230kg。
ライバルたるE30/M3より、50kgほど軽いのです。
これはちょっと意外でした。

重いアクセル・ペダルを踏んづけると、コスワース・チューンの1023型DOHCエンジンは、「グワアアアアアンッ」と言うものすごい咆哮とともに一気呵成に叩きあがります。
特に3,000回転を超えてからのパワー感と音はすさまじく、初めて走らせたときにはビビって思わずアクセルを緩めてしまいました(汗)。
この回転域ではアクセル・レスポンスも目覚ましく、その過敏さを中和させるために敢えてアクセル・ペダルのストロークを重くしているのではないか、と疑ったほどです。

5速直結のゲトラーグ社製マニュアル・トランスミッションは、先に述べた通り1速が左手前のヒューランド・パターン。
最初はなぜこんなワケのわからないパターンなんだ?と思いましたが、山道を走らせて合点が行きました。
2速⇔3速が一直線なんですね。
ダイレクト感のあるシフト・フィーリングと相まって、タイト・コーナー連発の山道などはギア・チェンジが非常に楽しいのです。
どうせ1速は発進時にしか使わないワケですから、ある意味合理的なのかもしれません。

ステアリングはかなりクイックでした。
ノーズは面白いように向きを変え、凶悪なほど固いサスペンションとの相乗効果でまるでカートのような操舵感です。
補修跡のあるコーナーではリアがやや跳ねる感じではありましたが、総じて接地感は高かったように思います。
巌のような剛性を持つボディのおかげで、サスペンションの仕事を全て路面に向けることができている、そんな印象を受けました。

そして、ブレーキ。
もう、ビックリするほど効きます。
制動力はペダルの踏力に比例して立ち上がり、非常に自然なフィーリングです。
巨大なオッサンの手で、後ろからクルマごとグーッと掴まれる、という感じでしょうか(←どんな感じだよ・・・)。

・・・と、いいところばかり書きましたが、もちろんそれだけではありません。
上述の通りサスペンションの固さはハンパではなく、「ベンツだベンツだ」と言っていた同乗者は例外なく黙り込んでしまいます。
現代の車のように、ハンドリングと乗り心地を両立させるなどと言うコンセプトは一切感じられませんでした。

さらに私の2.3-16は個体としての程度も良くはなく、この時代のメルセデスではお約束のエアコン・トラブルに見舞われたりしています。
またこちらもお約束のバルブ・ステム・シール劣化によるオイル下がりも私の2.3-16の持病で、トランクにはいつもエンジン・オイルを積んで走っていました。
シーリング剤の投入でテール・パイプから白煙を噴くことはなくなったものの、それでも約1,000kmでオイル1Lを消費していました。
他にも積算距離計が止まったり、渋滞の中でアクセル・ワイヤーが切れたこともありました。

しかしながら2.3-16のドライビングは、そんなトラブルによる心と財布の凹みを帳消しにしてなお余りあるほど楽しいものでした。
独りで数日間クルマの旅に出る、自称グランド・ツーリングを始めたのもこのクルマからですし、自分のクルマで北海道を走ったのも2.3-16が最初でした。
積算距離計が止まってしまったので、自分が走らせた距離はよくわかりませんが、とにかくあちこちよく走ったことを憶えています。

2.3-16.jpg
メルセデス・ベンツ190E2.3-16は、もう何もかもがエキサイティングでスパルタンなクルマでした。
同乗者への配慮を全く無視して作ったとしか思えないこのクルマと較べれば、E36/M3も現在乗ってるB3も、極めて普通のセダンだと思います。
クルマに対する私の既成概念を根本からブチ壊してくれた、本当に素晴らしいスポーツ・リムジンでした。
メルセデスはもうこの手のクルマを作ることはないでしょうから、2.3-16を走らせていた3年間は本当に貴重でラッキーな時間だったのだな、と感じています。
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MT

私が箱根の路肩に車を停めて、仲間と話してたときで
す。目の前に静かに黒っぽい190が停まりました。
やや低い車高、BBSのDTMホイール。
私たちが車に乗り込むと待ってたかのようにその190
は動き出し、私の前を走りだしました。その時の私はM
3B。先は十国峠です。私のことを待つような走り方で
した。私も嫌いではないので、後ろに付くとリヤトラン
クに張られたエンブレムは190D。ディーゼルか??
と思った瞬間こちらを探るようにペースアップ。
誘われてる感じで、私も嫌いじゃないのでその誘いに乗
って、真後ろについてやりました。すると、ペースをど
んどん上げて行きます。離れずについていくと、相手も
本気になったのか、全開で逃げ始めました。その時の加
速はディーゼルの加速ではなく、M3とほぼ同等の加速
を見せます。2.6のスポーツラインでも恐らくここま
での加速はしないと思われ、2.3−16か、2.5−
16かな??エンブレムディチューンかよ・・と思いつ
つ後ろについてました。相手がどこまで余裕を持ってた
かはしりませんが、多分限界近くで走ってたんではない
かと思います。その190は途中で急に減速してUター
ンして引き返して行きました。その区間だけ往復してた
んでしょうね。速そうな車を見つけては勝負を仕掛けて
いるのでしょう。そんなことをしたくなる車なんでしょ
うね。そんな思い出があります。
でも、私のように好きな人はいいですが、そうじゃなき
ゃ、いい迷惑ですわな。(^^ゞ
by MT (2006-01-04 23:40) 

wata

MTさん、こんにちは。

えーと、190Dは72ps/12.5kgm。
常々「クルマはスペックではない」とは思っていますが、190Dが286ps/32.7kgmのM3Bと同等の加速をするというのは考えにくいですね。
やはりご推察の通り、16バルブ・モデルだったのでしょうね。
あと可能性としては、AMG190E3.2でしょうか。
234ps/32.3kgm、AT仕様のみですがパワー・ウェイト・レシオは6kg/psを切ります。
しかしエンブレム・ディチューンとは・・・。

2.3-16は、上手い人が山道を本気で走らせたら相当に速いと思います。
私などは、とても2.3-16の限界を見るところまでは行きませんでした。
それでも運転する楽しさはピカイチで、それはひょっとすると次に乗ったM3Bや、今乗っているB3以上だったかもしれません。
by wata (2006-01-05 00:36) 

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