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GT2011北海道[9]:離岸 [drive/touring]

グランド・ツーリング9日目、北海道最終日。
ニセコから小樽へと走り、新潟行きのフェリーに乗る。

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朝4時半、アラームで目を醒ます。
寝起き状態でボケーッと露天風呂に浸かっているうちに夜が明け始め、空にかかる雲はゆっくりと消えてゆく。
ゆっくりと身支度をし、チェック・アウト。
夜露でびっしょりのウィンドウを拭き、昨日の夕方に補充したエンジン・オイルの量をチェックしてからB3を起動した。
気温は3℃まで冷え込んでおり、今季初めてシート・ヒーターを焚く。

今日は新潟行きのフェリーに乗るべく、9時頃までに小樽港へ行くだけだ。
だったら小樽に宿を取ればこんなに早起きせずに済むのだが、出航までの僅かな時間でも北海道の景色の中を走っていたい、そんな気持ちでわざわざニセコに泊まったのだ。
D58で森林地帯を倶知安[くっちゃん]へと下りていく。
最後の朝、空は青く高く、ニセコの山々の頂にちょうど陽が射し始めたところだ。
エンジンを温めつつ北海道では珍しい1.5車線幅の山道を下っていくと、樹々の間から巨大な羊蹄山が垣間見える。
どうせなら裾野までのフル・ヌードを拝みたいと思い、B3を走らせる。
いまひとつ視界の拓けないD58に見切りをつけてD66まで戻り、ニセコの駅に向かう途中でようやくそんな場所を見つけた。

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雲海に聳える、逆光の後方羊蹄山。
山の反対側へ行けば順光になるのだが、この先は雲海の下となるため、ある程度の高さがあるニセコ周辺からでしか観ることはできないだろう。
北海道最終日に素晴らしい景色を観ることができたことを、本当に嬉しく思った。
この光景を眺めているうちにいつの間にかかなり時間が経過していることに気づき、そろそろ小樽へと向かうことにする。
そのままD66を下ると、すぐに真っ白な霧の中に突入。
これが雲海となって羊蹄山を取り巻いているのだが、上はスカッと晴れているなんてとても信じられないほどの濃霧である。
視界を制限されたB3は、北上するR5をタラタラと走った。

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霧が晴れたのは、倶知安を後にR393へと舵を切ってからである。
このR393、私が北海道在住時に未通となっていた赤井川村への区間がつながったため今回のGTで走ることにしていたのだが、期待に違わず2車線の素晴らしい道が延々と続いている。
で、倶知安の外れで脇道からB3の前に入ってきた、地元ナンバーのニッサン・エルグランド・ハイウェイスター。
いつものように、すぐにブッコ抜かせていただくことになるだろう・・・などとタカを括っていたら、これが大間違い。
このミニバンが、R393を信じられないほどのペースで走るのである。
一定の距離を置いてトレースして行ったのだが、エルグランドの速さは尋常ではなく、ちょっと気を抜くと引き離されてしまうほどなのだ。
直線ではひたすら加速し続け、緩めのコーナーであればノー・ブレーキで進入し、その巨躯を盛大にロールさせながら曲がりきる。
ロング・ストレートの後半で加速が鈍ったのは、スピード・リミッターが作動したからであろう(汗)。
これほどまでに速く走るミニバンは高速道路を含めても見たことがなく、もう完全に私のペースを超えている。
心底仰天し、ブッたまげた。
そのスキルとスピリットに触れたく是非とも挨拶したかったのだが、残念ながらエルグランドは毛無峠を下った先で脇道へと逸れていった。
いやはや、すんごいドライバーがいるもんだ・・・。

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エルグランドのおかげで予想以上に早く小樽に着いたため、最後にもう一度北海道から海を観ようと思い、市街地を抜けて高島岬方面へと向かう。
おたる水族館の先まで上り、祝津パノラマ展望台にB3を駐めた。
灯台の向こうに拡がる石狩湾を眺めていると、間も無くフェリーに乗って北海道を離れることが俄かには信じがたい。
一週間前と同様に、ここからオロロンラインを北上したらさぞかし気持ちいいだろうな・・・。
そんな妄想を振り払って、小樽港フェリー・ターミナルへと向かう。
目の前にある「なか卯」で遅い朝飯を喰い、埠頭へとB3を回した。

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今日乗る船も、往路と同じ「ゆうかり」である。
「シャコタン車用入口(←意訳)」のある船尾側で待つ間、トランク・キャリアにまで荷物を積んだマツダ・ロードスターのおにいちゃんに話しかけた。
彼も三連休の間を休み、奥様と二人で野営を交えながら北海道を走っていたのだそうだ。
帰りたくない、帰ってから関東のせせこましい道を走れるのかどうか不安だ、社会復帰ができるかどうか心配だ、の3点で合意に達する二人のサラリーマン。
そうこうしているうちに、乗船開始の時刻となった。
第一甲板にB3を駐めて3Fまで上がり、インフォメーション・センターで往路と同じく貸切とした部屋のキーを受け取る。
今回は一等和室、三畳ほどのスペースだが十分に寛ぐことができそうだ。

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デッキに出て、出航の刻を迎える。

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鴎たちが飛び交う空の下、全長200m/18,300tの新日本海フェリー「ゆうかり」がゆっくりと離岸する。

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惜別の汽笛が轟き、船は港を後にした。

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売店でサッポロ・クラシックとハウス・とんがりコーンを買い込み、後部デッキに出る。
秋の爽やかな海風に吹かれ、遠ざかる北の大地と長く伸びる航跡を眺めながら呑んだ。

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旅の日記を綴ったり、艦内をぶらぶらしたり、昼寝をブッこいたり、風呂に入ったりしているうちに日没の時刻となる。
右舷のデッキに乗船客がたくさん出ており、その場にいた全員が見守る中、太陽は彼方の水平線に直接沈んでいった。
素晴らしいサンセットの余韻を味わうかのごとく、流れゆく小さな雲を残照が染めている。
風が一気に冷たくなり、乗船客が船内に戻る。
それでもなお独りその場に居残って、海と空の出会う場所を眺め続けていた。

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9月24日の走行距離は、131km。
走行時間は2時間07分、平均速度は62.0km/hだった。

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Maruhiro

wataさん

全部読みました。読んだのですが、雄大な景色を切り取るカメラワーク、読み手を乗せる文才、その才能に絶句が重なり、黙り込んでしまいました。
いや、本当に素晴らしい。それに尽きる。
雄大な景色もそうですが、それをこの写真に収めるか、、、、見とれてしまいました。
いくつかは本当に空気の匂いすら感じて、時間をそのまま切り取ったという表現がピッタリですね。
wataさんのブログ、本になると面白いですね。
出来れば動画が見たい気もします。

by Maruhiro (2011-10-14 21:30) 

zen

逆光の後方羊蹄山。

全体を眺めてから、一度フレームアウトし、今度は太陽を遮って見ると、その絵は物語るよ・・・、・・・、・・・

当然、私が言ったのではありませんから、あしからず・・・、・・・(汗)
by zen (2011-10-14 22:33) 

wata

Maruhiroさん、こんにちは。

ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。
・・・しかしですね、黙り込んでいただくほどの才能とか、そんなんコレっぽっちも持ち合わせちゃいませんから、私(汗)。

その日に感じたことを新鮮なその日のうちに書き留めたり、目の当たりにした光景を何とかカメラに収めようとシャッターを切ったりしましたが、結局、私のBlogでは体感した素晴らしさの1割も再現できていないと思っています。
そんな有様ですから、テキストやフォトにムービーを加えたとしても、焼け石に水となるのが関の山です(涙)。

by wata (2011-10-14 23:45) 

wata

zenさん、こんにちは。

うーん、なるほど・・・。
「ほら、この位置に太陽があるんだから仕方ないでしょ、オレのせいじゃないんだから」
・・・と、ド逆光であることを説明(言い訳)するために太陽を入れちゃってるんですよね(汗)。
いつか再び同じような状況となったら、いただいたアドバイスを実践してみようと思います。
ありがとうございました!

・・・と、お伝え下さい(←誰に?)。

by wata (2011-10-14 23:46) 

mtm

あらためて日本にはまだまだ素敵な所が沢山あるなぁ~って思いました♪

北の大地、久しぶりに行ってみたいです。。。
by mtm (2011-10-15 11:32) 

wata

mtmさん、こんにちは。

いやほんと、北海道はいいですよねぇ。
私も今回が初めてと言う訳では無かったのですが、それでも目にする景色はどれも素晴らしく新鮮でした。
その中を自分のクルマで、マイペースで走り続けることができるってのが最高なんです。
さ、mtmさんも是非!

by wata (2011-10-15 12:23) 

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